かの有名人も・・・

かの有名人も敬愛する世界的写真家
館からは、彼が愛した大山の雄姿を一望


地元出身の世界的写真家・植田正治氏。最近では、歌手、俳優として活躍するほか、アーティストとしてもたぐい稀な才能を発揮する福山雅治さんが師事していることで、一躍世間の注目を集めました。

そんな植田氏の功績を称え、1995年9月23日、郷土でもあるこの地に建てられたのが、建築家・高松伸氏設計による「植田正治写真美術館」。大山が"伯耆富士"の形で望める周囲の景観を取り込んだ建物自体、まさに巨大なアート作品を彷彿とさせてくれます。

館内には、彼が生涯に撮影した膨大な作品が一般に公開されるほか、2階には、カメラの内部にいるような感覚が体験できる映像展示室を設けました。

室内では、植田氏のプロフィールや活躍、理念を紹介するフィルムが200インチ(約250cm×450cm)の高画質大画面で一通り流された後、大山の今の雄姿が室内に逆さの状態でリアルタイムに映し出されます。


600kgを超える・・・

大山の“今”を見事逆さに写し出すのは
600kgを超える世界最大のカメラレンズ

その撮影に使用されているのが、今回お宝としてぜひともご紹介したい「超大型カメラオブスキュラ用レンズ」。総重量625kg(ガラスのみで約245kg)、全長73.22cmを誇る世界最大のカメラレンズです。

これらを製作した光科学研究所、清原科学研究所などの発表によると、発端は開館する約2年前の1993年、ハイビジョンレンズの逆側の壁に投射レンズを取り付け、町の名物として“逆さ大山”を投影したいという、当時の町長の発言がきっかけ。1部屋をまるごとカメラに見立て、その原点であるカメラオブスキュラを作る、つまり暗室であるカメラ(この場合は映像展示室のこと)の中に人が入り、壁に映った外の景色を眺めることが可能になるという、まさに夢のプロジェクトだったのです。

想像をはるかに超える・・・

想像をはるかに超える大スケール
不安なままプロジェクトがスタート

もちろん、これには大きな問題、数々の苦労が存在したことはいうまでもありません。
製作者によれば、当初は概要がわからぬまま簡単に考えていたそうですが、仕様を聞いているうち、これは容易ではない事業だということに気づき、設計できるかどうかわからないと否定的に考えを改めざるえなかったそうです。
その一番の要因は、当時歴史上に存在する一番大きなカメラをしのぐ、奥行きが10m、フィルムの大きさが5×4mというカメラ用レンズを作らなければならなかったこと。予算、材料の入手方法、時間などすべてにおいて完成させるには予定を組めない、想像を絶するシロモノであったことを実感したからです。


日本の技術者の職人魂を・・・

日本の技術者の職人魂を結集
未知なる巨大レンズの製作に挑む

しかし懸命にその術を探索、悪戦苦闘を繰り返すなかで、一つ一つ難問をクリア。少しずつ作業を積み重ねる日々が続きました。そして光明を見いだし、何とかプロジェクトの実現にまでこぎ着け出来上がったものが、現在来館者の目を楽しませている世界最大のレンズなのです。
実はこのレンズ、大きさに限っていうと世界最大のものですが、逆にその中身は、レンズ前端から後端まで、焦点距離の5.26%の長さという前代未聞の超小型レンズ。まさに最大にして、最小を誇る、規格はずれのレンズだったことがわかりました。
また組み立てには、天井クレーンを利用しなければならないほどで、そのスケールの大きさにはとにかく驚かされるばかりです。


室内全体が巨大なカメラ・・・

室内全体が巨大なカメラ。
その内部から大山の雄姿を望む

レンズは、部屋の床面から約5mの高さに設置。2群5枚構成のレンズの直径は60cmで、5枚のレンズの総重量は245kg、鏡胴部を含めると625kgにもなります。レンズの焦点距離は8m40cm、F値32、角度は21度で、反対側の壁面に映し出される映像の大きさは、直径7mにも及ぶ巨大な物です。

 “部屋全体が、大きなカメラ”

まさに私たちは、カメラの内部に取り込まれた逆さ大山の風景を眺めることができるのです。
アニメのような、映画のような、そんなファンタジックな体験。それもこれも、この部屋の、またレンズの構造を理解しているからこそなのです。ぜひ一度経験してみてください。
またこちらで使用されているレンズと同じものが、部屋のエントランス部分にも展示されています。その大きさを間近にご覧になれば、改めてその巨大さに驚かされることでしょう。